イリノイ州は米国で初めてデジタル資産取引に税を課す州となり、すでに最高値から48%下落している仮想通貨市場に新たな規制の摩擦をもたらした。
イリノイ州は米国で初めてデジタル資産取引に税を課す州となり、すでに最高値から48%下落している仮想通貨市場に新たな規制の摩擦をもたらした。

イリノイ州のJB・プリツカー知事は6月16日、「デジタル資産税法(Digital Asset Tax Act)」に署名し、暗号資産(仮想通貨)事業活動に0.2%の特権税を課すことを決定した。この日、ビットコインは6万5800ドルで取引されており、2025年10月に記録した12万6000ドルの最高値から48%下落した水準にある。
「この税は、株式取引や銀行送金といった従来の金融活動には適用されない方法で、デジタル資産取引を対象としている」。暗号資産推進団体Crypto Council for Innovationはこの措置に反対する声明を発表した。
この税は、イリノイ州の顧客向けにデジタル資産取引を仲介する取引所、カストディアン、ウォレットプロバイダー、ブローカーに適用される。総収入が10万ドルを超える事業者は登録し、納付義務を負う。知事室によると、この措置により、州の2027会計年度(総額559億ドル)に対し年間約6000万ドルの税収が見込まれている。ケンタッキー州は今年初め、予測市場に14.25%の税率で課税する米国初の州となり、ニュージャージー州も同様の法案を検討中である。
この法律は2027年1月1日に発効するため、仮想通貨企業にはコンプライアンス体制の構築、あるいはイリノイ州での事業継続を再考するまでに約6カ月の猶予が与えられる。他の州がイリノイ州に追随した場合、州レベルのコンプライアンスコストの累積が、取引所のサービス価格設定やサービス提供市場の在り方を根本から変える可能性がある。
ビットコインのマクロ環境が圧力に拍車
この規制動向は、ビットコインが6万5800ドル付近で膠着する中で表面化した。この価格水準は2025年10月の最高値から48%の下落を示す。暗号資産データサイトのAlternative.meによれば、Crypto Fear and Greed Index(暗号資産恐怖・強欲指数)は23を記録し、現在のサイクルで最も深い「極度の恐怖」領域にある。
企業による採用は機関投資家レベルで継続している。スペースXは6月12日、ナスダックに上場し、そのバランスシートには18,712ビットコイン(約12億9000万ドル相当)を計上。ベンジンガの報道によると、スペースX関連のETFは2日目に30億ドルの取引高を集めた。しかしマクロ環境は依然として脆弱だ。ロバート・キヨサキ氏は2026年にビットコイン価格が25万ドルに達するとの予測を堅持し、アンソニー・スカラムッチ氏は第4四半期までに15万ドル、キャシー・ウッド氏率いるARK Investは2030年までに125万ドルを目標とするが、これらはいずれもまだ実現していない回復を前提としている。
州レベルの仮想通貨政策の試金石
デジタル資産税法は、州の予算編成プロセスの最終段階で盛り込まれた。この経緯に対し、業界団体は十分な公開討論を経ていないと批判している。同法に先立ち、イリノイ州は2025年4月、Kalshi、ロビンフッド、Crypto.comに対し業務停止命令(cease-and-desist orders)を発出。これに対し米商品先物取引委員会(CFTC)は、州の命令が取引所に対する連邦機関の独占的管轄権を侵害するとして、同州を提訴している。
より広範な含意として、仮想通貨は新たな段階の州レベルの政策リスクに直面している。イリノイ州はデジタル資産を禁止しているわけではないが、仮想通貨取引を従来の金融とは異なる課税対象カテゴリーとして扱っている。取引所やカストディアンにとって、どの取引がイリノイ州在住者によるものかを追跡し、0.2%の課税額を計算し、報告義務を満たすコンプライアンス負担は、サービス提供の継続を困難にするほど高額になる可能性がある。トレーダーにとっては、そのコストが手数料上乗せという形で転嫁される公算が大きい。
本記事は情報提供のみを目的としており、投資助言を構成するものではない。