主なポイント:
- アップルからのキオクシア向け受注が2026年度に4760億円と58%急増
- 原材料在庫が急増、キオクシアがSSD生産用DRAMを事前購入
- モルガン・スタンレーは19%の上昇余地、オーバーウエート評価、目標株価11万円
主なポイント:

アップルからのキオクシア向け受注が58%急増し、原材料在庫が積み上がっていることは、ストレージ業界待望のスーパーサイクルが加速していることを示していると、モルガン・スタンレーは指摘した。
アップルはキオクシアホールディングスに対し、2026年3月期に4760億円(31億ドル)の売上高をもたらした。これは前年から58%の増加であり、同NANDフラッシュメーカーの全社売上高成長率37%を大きく上回る。キオクシアの年次報告書によると、この突出した伸びは、家電大手のアップルが今後のさらなる値上げを見越して部品の先行調達を進め、価格を固定しようとしていることを示唆している。モルガン・スタンレーのアナリスト、江並雄二氏率いるチームは6月25日付のメモでそう指摘した。
「このデータは2つの結論を裏付けている。ストレージ価格の上昇がついに消費者向け最終市場にまで波及したこと、そしてアップルが供給確保のための先行調達を実施していることだ」と江並氏は述べた。キオクシアの売上高に占めるアップルの割合は、前年の約18%から約20%に上昇し、絶対額は約3010億円から増加した。
報告書によると、キオクシアの原材料在庫は完成品や仕掛品が横ばいだったのに対し、急増した。総在庫は前年の3529億円から4126億円に達した。モルガン・スタンレーはこの在庫積み上がりを、サプライチェーン全体が持続的な価格上昇に備える中での、ソリッドステートドライブ(SSD)の主要部品であるDRAMの事前購入によるものと分析した。また、同社の設備投資構造も大きく変化した。建物・構築物への支出は1兆990億円から620億円に急減する一方、機械装置投資は1927億円から2兆5980億円に急増しており、工場建設から先端BiCS-8 NAND生産設備への重点移行を反映している。
設備投資のシフトが生産増強を示唆
キオクシアは2027年3月期に4500億円の設備投資を計画しており、当期から1660億円増加する。モルガン・スタンレーは、この投資の大半が四日市・北上両拠点におけるBiCS-8およびBiCS-10先端工程設備に振り向けられ、AIデータセンターのストレージ需要に牽引される次世代NAND需要の波に備えると予想している。
工場建設から生産ツール導入へのシフトは、キオクシアが次世代3D NAND技術の生産能力計画から量産へと移行する重要な転換点を示す。300層超の垂直積層メモリセルを採用するBiCS-8は、より高密度で低コストのビット実現を競う中で、サムスン電子のV-NANDやSKハイニックスの4D NANDと直接競合する。
投資への示唆
モルガン・スタンレーはキオクシアに対し、オーバーウエート評価と目標株価11万円を維持した。これは6月23日終値の9万2290円から約19%の上昇余地を示唆する。同社は2028年3月期のフリーキャッシュフロー利回りが約10%になるとの見通しを評価の軸とし、同期の利益予想に基づく株価収益率(PER)は11倍と算出している。
ストレージのスーパーサイクルはメモリーエコシステム全体に恩恵をもたらす。キオクシアと並んで世界のNAND・DRAM市場を支配するサムスンとSKハイニックスは、持続的な価格決定力による恩恵を受ける立場にある。アップルにとって、先行調達戦略は短期的なコスト抑制策となり得るが、2027年を通じて価格が上昇し続ければ、部品コストのインフレがやがて利益率を圧迫するだろう。7月に四半期決算を発表するマイクロン・テクノロジーは、このサイクルがさらに続くかどうかを示す次の指標となる可能性がある。
本記事は情報提供のみを目的としており、投資助言を構成するものではありません。