グレンコアとヴァーレ、20億ドルのカナダ銅合弁事業を検討
## エグゼクティブサマリー
**グレンコア**と**ヴァーレ・ベース・メタルズ**は、カナダで20億ドル規模の銅合弁事業を検討しています。この動きは、グレンコアの生産遅延と、世界のエネルギー転換にとって極めて重要な金属である銅に対する激しい市場競争に対処するものです。
## イベント詳細
**グレンコア・ピーエルシー (LON: GLEN)** とブラジルの**ヴァーレSA (NYSE: VALE)** のカナダ子会社である**ヴァーレ・ベース・メタルズ・リミテッド**は、カナダのサドベリー盆地にある隣接する銅鉱床の開発を共同で調査する契約を締結しました。この枠組みは、グレンコアのニッケル・リム・サウス鉱山の既存インフラを活用する可能性のある50/50合弁事業を概説しています。
このプロジェクトには、**16億~20億米ドル**の概算設備投資が伴います。21年間の鉱山寿命にわたって、約**88万トン**の銅と、ニッケル、コバルト、貴金属などの関連する重要鉱物を生産する予定です。最終投資決定 (FID) は、2026年に予定されている詳細なエンジニアリングと許認可作業に続き、2027年上半期を目標としています。
## 事業戦略と市場ポジショニング
この提案された合弁事業は、グレンコアがパートナーシップを通じて実行される低リスクのブラウンフィールドプロジェクトへの戦略的転換を表しています。このアプローチにより、同社は、自社のバランスシートに資本集約的なグリーンフィールド開発をコミットすることなく成長を追求できます。この動きは、同社の事業遂行と株価の低迷に対する投資家からの不満の高まりに直接対応するものであり、**GLEN**株は過去3年間で約30%下落し、同業他社に比べて大きく遅れをとっています。
このプロジェクトは、2028年までに銅生産量を**年間100万トン (Mtpa)**に回復するという同社の目標達成に向けた具体的な一歩となります。これは、来るべきキャピタル・マーケッツ・デーにおいて、経営陣が投資家の懸念に対処し、持続的なリターンを生み出す明確な道筋を示すと予想される主要な議題となるでしょう。
## 市場への影響
最終投資決定前の発表は、当面の銅供給には影響しませんが、将来の生産を確保するための明確な戦略的意図を示しています。電気自動車、再生可能エネルギーインフラ、そして人工知能に必要な電力消費の多いデータセンターにおける銅の重要な役割により、世界の銅需要は急増しています。この需要により、銅価格は今年初めから約30%上昇し、**1トンあたり11,000ドル**を超えました。
投資銀行は、この金属の見通しについて引き続き強気です。**UBS**は、2026年末までに価格が**13,000ドル/t**に達すると予測しており、一方、**シティ**は、今後6~12か月で**12,000ドル/t**を基本ケースとして見ています。グレンコアとヴァーレの合弁事業は、**BHP**、**リオ・ティント**、**テック・リソース**などの主要鉱山会社が銅ポートフォリオを拡大するための戦略的な動きに関与している、より広範な業界の銅資産争奪戦の一部です。
## より広範な背景:事業上およびESG上の逆風
グレンコアの成長追求は、重大な事業上および環境・社会・ガバナンス (ESG) 上の課題を背景に行われています。同社の2025年第3四半期生産報告書によると、自社源泉の銅生産量は、主にコラウアシ鉱山での問題により、年初来で前年比**17%**減少しました。並行して、同社のフェロクロム部門の生産量は**51%**急落しました。
南アフリカでは、**グレンコア・メラフェ・クロム合弁事業**が、実行不可能な電気料金のため、人員削減通知を発行し、ワンダーコップおよびボスホーク製錬所を保守・維持状態に置く予定であり、これにより約**2,425の直接雇用**が危機に瀕しています。カナダでは、同社の**ホーネ製錬所**が多大な財政的圧力とヒ素排出に関する集団訴訟に直面しており、その閉鎖の可能性についての憶測を煽っています。これらの問題は、アナリストがグレンコアの評価における「重大なESG割引」と表現するものに貢献しています。
## 専門家コメント
アナリストのセンチメントは、慎重ながらも楽観的な見通しを反映しています。キャピタル・マーケッツ・デーに先立ち、**シティ**は、同社のマーケティング部門の潜在力と年間1Mtpaの銅生産達成という野心を挙げ、目標株価440pで「買い」評価を再表明しました。マーケットビートを含む複数のプラットフォームにおけるコンセンサス評価は「適度な買い」であり、平均11ヶ月目標株価は約**388p**で、現在の取引水準である約362pから緩やかな上昇余地があることを示唆しています。
しかし、見方は様々です。**モルガン・スタンレー**は目標株価470pで「オーバーウェイト」評価を維持していますが、**ベレンベルグ**は、同社が乗り越えなければならない実行リスクと事業上の逆風を強調し、目標株価350pでより慎重な「ホールド」評価を維持しています。